◆“片思い10年男”

 それでも難しさを全然感じさせない。木梨憲武、61歳。実年齢とピタリと一致したこの初老役を難なく演じこなしてしまえる底力はいったい、どこから。

 バラエティ番組で見る姿と変わらないというのに、俳優になるとちゃんと役として存在している。

 日本の芸能界を代表する大御所お笑いタレントとしての意地がのぞく。余命いくばくかの初老男性を単に演じるだけが芸じゃない。

 俳優としても唯一無二。ならばもうひとつ。“片思い10年男”だって見事に演じちゃえる余裕がある。

 第2話では、そんな木梨にしかやっぱり演じられないなと誰もが納得する場面があった。それは雅彦が作成した死ぬまでにやりたいことリストのひとつ、瞳との伊豆旅行でのひと幕だ。