◆表情で見せる配慮と信頼のおける人間性
第3話。里夏が勤務する弁護士事務所内でのこと。彼女から離れず警護を続ける辰之助を横目に、里夏にやや恋愛マウントをとる戸口美央(岡本夏美)が会話をする場面。
どうやら美央は辰之助のことを狙っているらしい。的をしぼる彼女が彼のことをこう説明。
「クールで侍っぽい」
北沢辰之助というキャラクターを説明するにはひとまず十分だ。何せ岩本のあの佇まいが、ドラマ展開の都度、裏書されるうち、だんだん辰之助が確かに侍に見えてきた。美央がクッキーを渡しに行くと、辰之助の目が一瞬泳ぐ。
単に無骨ではないお茶目なところもいい。基本は無表情を貫く演技だから、セリフは多くはない。「考察系アクション・ラブコメディー」と銘打たれる通り、セリフ以外にも細かなヒントが張り巡らされている。
重要な小道具となるサバ缶を見て、つい思い出してしまった。玉置浩二が缶詰工場の工場長として奮闘する『コーチ』(フジテレビ、1996年)。
売れないサバ缶を売れるサバカレー缶へと変貌させるべく、試作を重ね、味見する場面の寡黙な玉置を岩本に重ねて見たくもなってしまう。
わずかな心の揺れをモノローグで説明しながらも、多用はせず、きちんと岩本の表情で変化を見せてくれる。
本作全体に張り巡らされた配慮を感じ取ると同時に、何とも信頼のおける岩本の人間性がにじむように思う。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu