◆1ミリの妥協も許さない制作過程

こだわりの後ろ姿
――制作へのこだわりはありますか?

「顔の表情が動いたりすることはないので、目を開けている子は顔を見たら人形だとわかります。ですから、目は自然な輝きと奥行き感があるグラスアイを、唇や鼻には湿った感じを出すことでよりリアルに制作するよう工夫しています。また、うちの工房では後ろ姿が本物の赤ちゃんに見えるようにこだわっています。実際、抱っこしたときに他の人が見ても、お人形だとはなかなか気づかないと思います。特に髪の毛にはすごくこだわっています。

赤ちゃんの毛は細くて柔らかく、日本にある素材ではなかなか再現できません。日本の市松人形に使われているような毛は、太く固すぎて頭にフィットしてくれないんです。なので、自然に見えるモヘアというヤギの毛をポーランドから取り寄せて植毛をしています」

1本1本丁寧に植毛する
1本1本丁寧に植毛している
――リボーンドールの制作の流れを教えてください。

「まずは海外から届いたキットを洗浄し、きれいな状態にします。次に、人間の肌の特徴を再現するためのペイントです。肌の赤みや血管の青さも再現するので、ペイント自体には約20ほどの工程を重ねます。

具体的には、真っ白なキットに黄、紫、緑色などを薄く重ね、肌の色となるベース色を作ります。そして、肌のツヤ感を出す作業を行っていきます。それができたら、ガラス製の目を取り付け、最後に髪の毛を1本1本植え込みます。これらの工程が終わったら、リボーンドールの完成です」

――オーダーメイドを受け付けることもあるのでしょうか?

「オーダーは受けておらず、完成したお人形の写真を見て購入をお願いしています。というのも、お客さんが望む雰囲気や特徴を映像や文章で共有していただいても、実際に完成した作品は必ずしもリクエスト通りに仕上がるわけではありません。

髪の毛のウェーブや長さ、ほっぺたの色合い、眉毛の形など、細かい部分の微妙な違いでもお客さんのイメージから離れてしまうことがあるんです。なので、工房のサイトの写真をじっくり見ていただいて、納得いただける作品があればお迎えしていただいています。

リボーンドールは安価とはいえない値段ですし、ネットショップなので気軽に手に取れないこともあり、みなさん吟味しながら最終的にどの子にするか選ばれています」