◆目黒蓮と生方脚本の組み合わせ

『silent シナリオブック完全版』
『silent シナリオブック完全版』
 ただ、この声量の小ささは、海を娘として認知するかしないか以前からの問題。第1話冒頭、夏と弥生が夏のアパートに帰ってきたときの場面。「あぁ」とか「う~ん」など、夏は判然としないボソボソとした反応で終始受け答えする。

 弥生が、「うんとさぁううんの間みたいな返事やめれる?」と言っても、夏は、「う~ん」と再びボソボソ。でもこれは、ボソボソ台詞の反復を得意とする脚本家・生方美久が書いた作品世界なのである。

 生方の前作『いちばんすきな花』(フジテレビ、2023年)にしろ、目黒蓮が主演した前々作『silent』(フジテレビ、2022年)にしろ、主人公がはっきり声を発することは極力抑えられていた。

 目黒と生方脚本の組み合わせとは、静かなる声のドラマで共通する。だから本作が7月期の新ドラマ、しかも月9だろうと何だろうと、夏と海の晴れやかなムードとは関係なくても納得出来てしまう。