◆門を開けると「不法侵入!」

 ユウジさんの仕事仲間であるサイトウさん(仮名・45歳)の体験談です。

 普段はほとんど荷物を届けたことのない一軒家に、ある日珍しく荷物が。社内の仲間に聞いても「あの家は荷物が届くことがないから、どんな人が住んでいるのかわからない」ということだったそうです。

「これを機に、どんな人が住んでいるのか知ろう」と思いながら配達先の一軒家に行ったところ、門にはインターホンが設置されていません。門は施錠されていなかったため、門から中に入り玄関先のインターホンを鳴らしました。すると、中から白髪の女性が険しい表情で出てきたのです。

「玄関を開けてすぐに『不法侵入だ!』と叫ばれました。荷物を届けに来ただけだと説明しても『不法侵入だ! 出ていけ!』と騒がれて、どうしようもありませんでした。すると中から50代くらいの女性が出てきて、『お母さん、やめて』となだめながら白髪の女性を奥へ連れていきましたが、僕は呆然としていました」

 その後、50代くらいの女性が出てきて、サイトウさんに「独り暮らしをしていた母が認知症になってしまい、今は一緒に住んでいる」と説明をしてくれて、合点がいったそう。驚いたものの、いわゆる理不尽な“カスハラ”ではないとわかりサイトウさんは胸を撫で下ろしました。

 その後、その家には荷物が届くことがないため、サイトウさんはあの母娘がどうしているのか少し気になっているのだとか。