■「イジメよ、あれ」という新しい立ち位置

 このクラスにイジメはあるか、ないか。イジメている側の生徒はもちろん認めないし、イジメられている側もいろんな事情で認めなくない。周囲の教師も、面倒だから見て見ないふりをしている。ここまでは、すごくよくある配置です。そういう状況で、正義の味方である主人公教師が、どうイジメを顕在化させていくか。数多の学園ドラマの作り手たちが頭を悩ませてきたところでしょう。

『ビリオン×スクール』の主人公である加賀美センセは、この問題に「イジメがないと困る」という立場からアプローチしています。加賀美の目的はあくまでAI教師の開発であって、その開発のためには「イジメ問題に対処する」というプロセスを「TEACH」に体験させる必要がある。だから、イジメよ、あれ。こんなにドライにイジメ問題に取り組んでいく教師は、見たことがありません。

 それとは別の話として、大富豪の家に生まれた加賀美も幼少期にイジメに遭っていたことが示唆されます。AI開発者としての実利と、イジメを克服してきた者としての当事者性。その両面でもって、加賀美はこのイジメ問題を解決していきます。