◆まひろ、道長が感じる無力さ
自分の生きる道を模索しているまひろ。
まひろはたね(竹澤咲子)という貧しい少女に読み書きを教えていたが、彼女の父親に「文字などいらない」と言い放たれてしまう。自分たちはお偉方の慰み者じゃない、と。
もちろん、まひろは良かれと思ってしていたことだが、たねたちにとって、文字の読み書きが役に立つかは……分からない。まひろは迷いの中にいた。
一方、道長も道隆の政に不服を持ちつつも、何もできずにいる。「なにひとつ為していない」と悔しさもにじませる。
それぞれの想いがあって道を違えたはずなのに……。
忸怩(じくじ)たる思いを抱えているふたりは月を見上げる。見ている月は同じだけれど、ふたりがその悩みを共有することもできないのが、切ない。
<文/ふくだりょうこ>
【ふくだりょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ