◆さらば、兼家

NHK大河ドラマ『光る君へ』第14回
兼家(段田安則)の体は弱っていた。老いがヒタヒタと近づいてきているのが、回を追うごとにその様子がはっきりと現れている。

死期を悟った兼家は道隆(井浦新)、道兼(玉置玲央)、道長を呼び、出家をする、と告げた。そして、自分の跡を道隆に継ぐように、とも。

これに納得できないのは道兼だ。兼家のためにこれまで汚れ仕事をしてきた。今の父があるのは自分のおかげだ、と訴える。が、異議を申し立てる道兼を兼家は一喝。

「人殺しに一族の長が務まると思うのか」

それは、まひろの母を殺めた罪。ここまでは、道兼をなだめるような言葉もたびたびあったが、もはや兼家は何も隠さない。お前の役目は一生汚れ仕事をすることだと吐き捨てる。

振り返ってみると「穢れ」というものを重く見ているのが分かる。一度汚れた手はもう綺麗にはならない、と言われているかのようだ。まひろの母を殺めたあの日に、運命は決まっていたのか。

NHK大河ドラマ『光る君へ』第14回
一方で、道長も死に触れることが多い。それも、大事な人の死に。直秀の死から、ひとつの価値観が彼の中で変わったことは間違いない。「穢れ」よりも重視していることがあるのが感じられる。

そして、自分の手は汚さずとも数々の企みによって今の地位に上り詰めた兼家が穏やかな死に際であるはずがない。月を眺める兼家の表情のグラデーションが、彼の人生を辿っているようでゾクゾクとした。