◆自我を出さないのは、苦労したし面白いこと

神田伯山
―― 講談とどちらが楽しいですか?

伯山:そりゃ講談のほうが楽しいですよ(笑)。本業ですから。自分がOK出したりすればいいだけなので。でも、雇われているということも楽しかった。今回で言うと残る作品になるので。出来上がりをみたら、とても素晴らしかったです。これは皆様のおかげです。

ただ、声優さんたちはよく演出家の言うことを聞いてるなとびっくりしました。僕みたいな自我が強い人間は、絶対演出家の言うことなんか聞きたくないと思っちゃうんですよ。

僕自身も講談で師匠の芸を継承していくにあたり、教わったことを基礎としてそっくりそのままやってという流れはあるんだけれども、そこから先は自由なものがあるから、「こうしてください」と言われると学校の授業も同じですけれども、嫌なんですよね。「やれ」と言われると反発心が生まれちゃう。

そういう面で言うと、合わせる能力が他の出演された方々は長けていらっしゃる。だからチーム芸ですよね。そう考えると、普段の僕はあくまでピン芸なんですよね。ピンとチームでやるものがこうも違うのかと、そういう発見はありました。

ただ、塚原監督のことは信頼していたので、悪いものにはならないとは思っていました。第一、作品は監督のものなので、そこは自分の自我を出さないようにというのは苦労したことでもあり、面白いことだったと思います。だからまさに雇われ芸という感じですかね。