理想の母親像の呪縛って、いつまで続くんだろう

『PRIME』より引用
(画像=『PRIME』より引用)

ーーミイさんにとっては、母親のツラさ、どんなことでしょうか。

ミイ:私は何に苦しんだかというと、3歳児神話とか、日本にステレオタイプとして残っている理想の母親像。その理想と自分の働き方や生き方の狭間ですごく苦しんできました。

前職は長時間労働で、女性は結婚したら辞める社風でした。ワーママへの理解も乏しくて、妊娠したときに辞めるように匂わされました。13年前の話です。どうにか産休をもらって、復職したときには従業員2000人のなかのワーママのパイオニアに近かったんです。正直職場の理解は得られず、総合職の営業職だったのですが、キャリアは妊娠したことで完全遮断。苦しみましたね。本当は今も昔も夫婦で決めればいいことだと思うんですけど、「家事育児は女の仕事」というのが職場に於いては随所に残っていて、理想の母親像がキャリアの邪魔になる時代でした。

そして、何よりも自分の中にもそれが根付いているのが私の戦いでした。

『PRIME』より引用
(画像=『PRIME』より引用)

スラムダンクの作者である井上さんの「リアル」という作品があるんですけど、それに出てくるお父さんのこんな台詞があって。

「息子の成長を見逃してまでがむしゃらに働いたあの仕事は、僕でなくてはならなかったんだろうか?」

これが13年間ずっと、私の傍にあります。それが私の葛藤、戦いでした。

ーー会社からいわゆるマタハラ、パワハラを受け、モヤモヤしながら仕事を続けている人は多いんじゃないかと思います。

ミイ:マタハラとかママハラとか、自分の会社からの評価が低かっただけじゃない?って思って、言い出せない人もいると思うんですよ。私はもう堂々と「時代のせいだ」と開き直っちゃってるんですけど。ハラスメントにあったことは自分の傷でもあり、それを恥ずかしく感じてしまう人もいると思うんですよね。

ーー悲しいことに、今はその発信を”自意識過剰”と受け取る人もいる世の中かもしれません。

ミイ:私は今回の座談会では参加者の人となりを知っているので堂々と話せたけど、心を許せない相手や上司の前だと、「こんなことに傷ついた」と言い出せない人もいるだろうなと思います。

みくりや:大事な発信ですよね。

ーーPRIMEでも、今後もそういう声を発信していきたいですね。

『PRIME』より引用
(画像=『PRIME』より引用)

ミイ:もう一つ、母親のツラさというよりは「私の人生ってこうなんだなあ」と思った話なんですが。私はK‐POPが好きで、今は子どもと家族の予定を優先しつつも、予定が許せば海外公演に行くなど”推し活”の時間を確保できるようになってきたんですね。でも、推しが目の前にいて「今私の人生最高潮!!」という時に限って、子どもを置いてきているってことが絶対に頭をよぎっちゃうんですよ。「母親たるもの子どもとずっと一緒にいるべき」という私の理想の母親像の呪縛っていつまで続くんだろう、って。

呪縛と言いましたが、嫌ではないんですよ。私は全然、子ども優先でいいと思っているので。だけど一方で、たまには100%自分を愛する時間がほしい。でもできない。できる環境があってもできないんです。100%自分だけになりきれない現実を目の当たりにして、戸惑いや葛藤があります。