結婚したら経済不安は解消されるのか

(写真=beeboys/Shutterstock.com)

独身女性の抱える不安は、「一人で一生自分の面倒を見ていけるのか」という部分が大きいと考えられます。一般的に、女性よりも男性の収入が多い現状では、結婚した方が経済的に安定すると考えるのは無理のないことでしょう。

ところが女性個人の収入にフォーカスすると、世界の中でも日本の30~40代既婚女性の収入は低くなっています。また、専業主婦世帯の貧困も近年は問題視されています。果たして、結婚することで経済不安は解消できるのでしょうか。

これからの生存戦略として結婚を考え直す本、『「逃げ恥」にみる結婚の経済学』(共著・白河桃子/是枝俊悟、2017年、毎日新聞出版)のシミュレーションから見てみましょう。

このシミュレーションでは、夫35歳、妻25歳で結婚し、妻28歳で第一子、31歳で第二子出産。夫は80歳で死亡、妻は87歳で死ぬまでの17年間を一人で生きる想定です。

当初の貯金額は250万円、基本生活費や教育費、住宅費、税や社会保障についての詳細設定は省略します。

妻がワンオペ家事育児のシナリオ

第二子出産後に、妻は仕事と育児の両立に苦しみ退職。そして、第二子が小学生になった38歳からパートを再開するというシナリオです。妻がほぼ専任で家事育児を担う、日本の共働き家庭で多いパターンです。

夫婦それぞれの収入設定を見ると、夫の当初年収は700万円。年収は昇級などで徐々にアップして、ピークは45歳の913万円になります。それ以降は少しずつダウンして、59歳では614万円までに減ります。60~64歳はその7割で推移し、65歳に退職金1500万円を受け取り、年金生活に入ります。

対する妻は26歳時点で年収300万円、第一子出産後は時短勤務で220万円、第二子出産後の専業主婦期間を経た後、38歳から夫の退職まで年収100万円のパート勤務です。

この試算では、妻が40歳を超えるころから年間収支は赤字となります。貯蓄残高は、夫が死亡する少し前(妻が67歳)からマイナスになり、80代半ばを過ぎるころには500万円を超す赤字になる計算です。

妻が正社員のシナリオ

今度は、妻が第一子と第二子出産時に、どちらも6カ月の産休・育休を取り、昇給・昇進しつつ65歳の退職まで正社員で働くシナリオです。

この場合、夫は妻のキャリアを支えるため、6カ月の育休を2回取得、第二子が小学校に上がる47歳まで残業はしません。そのため、ワンオペ家事育児のシナリオと比べると、若干夫のトータル年収は下がります。

一方の妻は、年収300万円(26歳時)から年収537万円(50歳時)まで昇給し、その後は7割の年収となった後、定年時に退職金1000万円を受け取ります。

この試算だと、年間収支で支出が収入を超えるのは、妻が70歳を超えてからです。晩年の貯蓄残高は6000万円を超えます。