女性のライフコースと不安の関係

(写真=Antonio Guillem/Shutterstock.com)

「わたしは一人で過ごす時間の方が好き」と思う独身女性でも、将来に漠然とした不安を感じることはあるでしょう。女性が人生の過程で抱える不安について分析した調査データがあります。

ニッセイ基礎研究所による「家族に関わる女性の不安-多様化する女性のライフコースと不安、政策にも多様性の観点を」(久我尚子、2017年)をご紹介します。

家族に関わる不安の5要因

この調査では、20~60代の男女を対象に、家族に関わる不安にはどのようなものがあるのかを調べています。そして、浮かび上がった不安を「死後不安」「子育て不安」「介護不安」「独身不安」「子なし不安」の5つの要因に整理しています。

「死後不安」は自分の葬儀や墓、相続など死後についての不安、「子育て不安」は子や孫、家族関係についての不安。「介護不安」は自分や家族の介護についての不安、「独身不安」は独身による孤独や子供を持てないことについての不安、「子なし不安」は子供が持てないこととその寂しさによる不安となっています。

未婚女性は「独身不安」、既婚女性は「介護不安」と「死後不安」

女性全体の傾向としては、年齢とともに結婚や子供関連の不安から、介護の不安へ移っていくことが分かります。

未婚女性、特に若い世代では、既婚女性に比べて不安要素が多い傾向があります。それは既婚女性に比べて「独身不安」や「子なし不安」を抱える上に、その他の不安が長期にわたるためです。

年齢による移り変わりに注目すると、20~40代までは「独身不安」「子なし不安」とともに自分の「死後不安」を抱えていますが、40歳代で「子なし不安」が消え、50歳代に入ると「独身不安」や「死後不安」も消えて「介護不安」のみになります。

既婚女性の50代・60代を見ると、専業主婦では「介護不安」、子なし女性は「介護不安」「死後不安」が強く表れています。

独身女性の晩年はむしろ不安が少ない?

調査では、未婚女性が最も強く抱えているのが「独身不安」であり、これは30代女性で顕著です。その理由として、若い世代や女性に多い非正規雇用など経済環境の厳しさが影響していることが挙げられます。

しかし50代や60代に入ると、未婚女性の不安はむしろ消え、既婚女性の不安の方が強く表れています。調査結果では、既婚専業主婦の家事・育児・介護負担の大きさや、後継者の有無で直面する不安の存在を指摘しています。未婚女性の場合は、人生の折り返しに入り、自分の最期に備えだすと「死後不安」が解消する可能性があるとしています。

若い頃に抱える独身の不安は、自分の晩年についての不安が大きいでしょう。これは、実は取り越し苦労なのでしょうか。