◆「手の施しようがない」と余命宣告

 豆きちの口の中にできた腫瘍は破れており、結果的に血と膿が出ていました。また、精巣は片方がお腹の中で肥大化していました。

 これらの病状について、後日知らされた診断結果は「口腔メラノーマ」。すでにリンパ節に転移しており、肺にも転移している可能性があるという重篤なものでした。

 そして、精巣のほうは「悪性ガン」。獣医師は「手の施しようがない」と、ここで豆きちの余命宣告を受けました。中村さんはその診断を聞き、呆然としました。

 しばらくして我に帰り「長年、犬としての喜びを知らされることなく、人間の『商売道具』として使われてきた豆きちの最期が、どうしてこんな悲惨なものになってしまうのか」と、その不条理を前にあまりの悔しさと怒りから自然と涙が溢れ出ました。