自分もそういう齢になったんだなと思う

 多野さんの息子からの手紙には、最後に父親が取り組んでいた集大成のような仕事があって、それを息子さんが受け継ぎ、完成させてから会社を閉じる、と書いてあった。

「まだ若いのに、よくやっているなと感心しました。さすが多野さんの息子ですね、と伝えたかった。私が素人に毛が生えた程度のスキルや経験しかなかったころから、ここまで仕事を振ってくれて、見守って育ててくださったことへの感謝を込めて、息子さんにはお悔みの手紙を出しましたが、最後のやりとりについて書けませんでした。ご家族は多野さんの異変を何か感じていなかったのか、確かめたくはあったのですが」

 友人や仕事先の人との別れが増えてきた。自分もそういう齢になったんだなと思う。できれば、お世話になった多野さんとはちゃんとお別れをしたかったと思うが、仕方ない。

 そして、こんな思いが想起するのだ。

 十数年前の脳卒中が急死の原因になるのだろうか? 本当は、ワクチンが原因なのではないか。

 いや、そんなことを思うこと自体、反ワクチン派の片棒をかつぐことになる。ワクチンへの疑念を振り払おうとするが、またよみがえるのだ。「ワクチンで亡くなった人は多いんだよ。国が隠しているだけで」という多野さんの言葉が。