1年ぶりの連絡で、これまでの「?」と符号が合った

 酒井奈緒美さん(仮名・56)は、1年前に突然連絡が途絶えた取引先の多野さんからの封書を受け取って戸惑った。

 最後のやりとりがワクチンに関する論争だったので、それが原因で仕事を切られたのか、あるいは脳卒中の既往歴のある多野さんの体調が悪化したのかもしれないと心配していたからだ。封書の差出人の苗字は多野だったが、名前は別の男性だったことから、イヤな予感がした。

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 封を開けた酒井さんの目に飛び込んできたのは、予想どおり、多野さんの訃報だった。

「多野という苗字の差出人は、多野さんの息子さんでした。多野さんが昨年亡くなっていたこと、突然の死だったので、多野さんのパソコンやスマホのパスワードがわからず、取引先に連絡もできなかったことが、お詫びの言葉とともに記してありました。そして、死因は、“おそらく十数年前の脳卒中が関連していると思われます”とありました」

 酒井さんは、予想できたこととはいえ、多野さんの死を確認したことに衝撃を受けつつも、これまでのたくさんの「?」と符号が合ったことにスッキリする思いもあった。

「それでも、息子さんの手紙には急死とあったので、いつもの仕事の連絡が来なくなったころは少なくとも倒れていたわけではなかったということで……そこが今ひとつ納得できないところではあるのですが」

 もう多野さんと話はできないので、真実は闇の中だ。