◆2位:アンチヒーロー/重厚な展開の“The 日曜劇場”
そして重ための代表格、日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系)も素晴らしかったです。主演の長谷川博己が演じたのは「殺人犯をも無罪にしてしまう」“アンチ”な弁護士・明墨。本作は明墨が、同じく弁護士の赤峰(北村匠海)や紫ノ宮(堀田真由)らとともに、12年前の“糸井一家殺人事件”で有罪判決を受けた死刑囚・志水(緒方直人)の冤罪を晴らそうとする物語です。
社会的テーマを扱うことも多い日曜劇場の枠で、本作は「正義とは何なのか?」を終始私たちに問うてきました。
明墨は分かりやすい“正義の人”ではありません。当初は、この人いい人? なんかいけ好かない感じ? と思わせ、分かりやすい主人公感がない。いきなり殺人犯に向かって「無罪にする」とか言って、本当に無罪にしちゃうし。しかしそれこそが、作り手が視聴者に問いたかった「人の正義不正義は、どう判断するのか?」というテーマなのかもしれません。明解な善悪を示さないことで、一つひとつの事件がどのように12年前の事件に繋がっているのか予測できませんでした。
第1・2話で無罪にした殺人犯の緋山(岩田剛典)が、志水を無罪にするキーマンと分かったときには心底びっくり! 近年では珍しくコメディ要素がまったくない、目が離せない秀逸な展開力に唸らされました。そして明墨は、警察官・倉田(藤木直人)、裁判官・瀬古(神野三鈴)、検事正・伊達原(野村萬斎)という権力をもつ者たちの“行き過ぎた正義感”と“保身”を明らかにしていくのです。