◆フルーツの手土産はありがたい。でも、むくのは私

 裕美さんは子どもをおぶって化粧を簡単に済ませ、シンクには洗い物が溜まった状態のまま、30分後を迎えてしまいました。

 友人と帰ってきた隆さんは家に帰るなり「ごめんな! 散らかってるけど」と友人に声をかけます。友人は「すみません。突然お邪魔しちゃって。良かったらこれどうぞ」とフルーツを手渡してくれました。

 裕美さんは「ありがとうございます」と笑顔で応じましたが、このフルーツの皮をむいて切って出すのも裕美さんです。お皿を出して皮をむいていると、ようやく眠ってくれた赤ちゃんは、隆さんと友人にのぞき込まれて、ふえふえと声を上げています。

フルーツ
「フルーツ、どうぞ」

 テーブルにお皿を置く裕美さんの表情は硬く、さすがの友人も雰囲気を察しました。フルーツを一口、二口と食べると「竹下、あんまり長居すると悪いから、そろそろ帰るよ」と早々に帰宅しようとします。

「なんだよ。せっかく来たんだからもっとゆっくりしていけよ」

 事態に気がついていないのは隆さんただ一人。

「裕美さん、じゃあまた」

 そそくさと帰っていく友人を見送り、隆さんはトドメの一言を発しました。

「まあ、他人の家じゃなかなか落ち着かないよな」

 その瞬間、裕美さんの怒りは沸点に達します。