◆道長の新たなライバルが登場?

まひろはと言うと、為時を支え、これまでよりもイキイキしているように見える。贅沢な国守の屋敷ではまひろの部屋もある。用意された墨と筆、紙に少し嬉しそうな表情を浮かべ、さっそく歌を書く姿も。

そんなまひろにはひとつの出会いが待っていた。

越前の国府に向かう途中で立ち寄った敦賀の松原客館。滞在中に浜辺に出ると、そこには宋の装束を身にまとう男性がいた。乙丸(矢部太郎)が呼び止めるのも聞かず、男性に声をかける。

まひろが名乗ると、男性は落ちていた木の枝で砂浜に自分の名前を書いた。その名は「周明」。演じるのは松下洸平だ。

NHK『光る君へ』第22回
砂に字を書くというシチュエーションは、まひろと道長(柄本佑)の出会いを彷彿とさせる。

まひろは日本語、周明は中国語なのでコミュニケーションはままならないが、通訳を介したり、手探りで意志の疎通をしようとしている。

そう、まひろは周明に興味を持っている。

宋の装束を着ているという時点で気になっただろうし、言葉が通じない、ということも好奇心を掻き立てられるのだろう。道長とのことを振り返ってみると、まひろはどこかミステリアスな人が好きなのもしれない。あと、頭が良いことも好みのタイプとして挙げられそうだ。

で、まひろの言動に周明がわずかに笑みを漏らすのが良い。あまり感情が見えない人のポジティブな表情が垣間見える瞬間というのはキュンとするなあ……とイチ視聴者としても楽しんでしまう。

このあと医師見習いだということも分かる。優しく穏やかな中国語、自分が知らないことを知っている、知らない世界を見せてくれそうな周明はまひろにはとても刺激的な存在のはずだ。

さらにラストには三国殺しの真犯人を連れてくる。そこで発したのは中国語ではなく、日本語。驚きを視聴者に与えて締めくくった。

ミステリアスな佇まいから畳みかけるようにして、正体を明かしていく。

同時に、新たな疑問も浮かぶ。「彼は一体、何者なのか」「その素性は」そう考えてしまっている時点で、周明に心を奪われている。

そして、黙って相手を見つめているだけで、画面に映し出されている情報以上のものを与えてくれる松下洸平はナイスキャスティングとしか言いようがない……。