■感情に流されるなという鉄則
第1話と第2話で雪崩被害を描いたときに、人命救助の現場では個人の感情に流されるなという話が、すごく説得力を持って語られていたんです。ハルカンを「命を救うことに取りつかれている人」と呼び、その危うさをさんざん説いていた。それは、自らの命を顧みずに現場に突入して二次災害に巻き込まれることを「愚」とする哲学だったんです。
ところがここにきて、灯さんの死の真相が徐々に明らかになるにつれて、どいつもこいつも現場において個人の感情をむき出しにしてきているんですね。仕事こそちゃんとやるものの、上野さんも運転手兼料理番の丸山さん(仁村紗和)も、「辞める」とか言って微妙な顔をし出している。
ドラマの冒頭で語られた哲学に対して、縦軸にある「灯さんを失った悲しみ」がノイズになってきているように感じるんです。
今回のラスト、ハルカンは自らの命を顧みずに土石流の現場に突入し、流れ落ちてくる巨大な岩石に潰されそうになります。そんなハルカンを上野さんが横から突き飛ばし、上野さんはそのまま土石流にのまれてしまう。
絵に描いたような二次災害ですし、これをやっちゃいけない、こういう事態を引き起こしてしまう個人の感情を克服しようという哲学を謳いあげて始まったドラマなのに、結局そこを乗り越えてなかったということを今さらに描かれてしまう。
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