◆2:決して型にハマらないストーリー展開
誰かを一方的に悪者にしない描き方も芦原先生の作品の特長。例えば、女性への偏見にまみれた36歳の銀行員男性・笙野(しょうの)。はじめは、田中さんを“おばさん!”と呼び止め、朱里のことは“媚びまくって、男つかまえることしか頭になさそう”と決めつけるなど、失礼な発言しかしない人物です。
登場した当初は、筆者も「なんだこの無礼な男は!」「でも、アラフォーのこじらせ男子ってこういう価値観なのかも……?」なんて思っていました。しかし、徐々に彼を見る目が変わっていき、なんなら好きになりました。それは、彼の偏った価値観の背景にある家庭環境や過去の恋愛経験、親切心をもつ人間性が、丁寧に描かれていたから。さらに、田中さんとの対話、交流を通して笙野は少しずつ価値観をアップデートしていくのです。
そこから一気に田中さんと笙野が恋人関係に発展していくのか?! と思った読者も多いはず。しかし、そんな王道展開にはならないのが芦原先生の作品です。恋の矢印は簡単には向き合わないし、“理想的な気もするけど、おばさんだから抱けない!”など葛藤や勘違いをくり返していく笙野。
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