■鮮烈なフェイスターン

 プロレスの世界では、悪役(ヒール)だったレスラーが善玉(ベビーフェイス)に転じることを「フェイスターン」と呼びます。

 これまで、紀本部長の意向のままに働き、花咲たちを鼻つまみ者として扱ってきた昇仙峡が、その実、紀本部長の寝首をかこうとして近づいていたことが明かされます。亡き恋人の遺志を継いで、銀行を変える。そのために昇仙峡は経営企画部の中枢までたどり着いていたのでした。

 花咲に対する冷徹な態度も、花咲の中に恋人を見ていたからでした。あなたのように真面目すぎるバンカーは、危うい。そのまま自らの正義のままに突き進んだら、死んでしまうこともある。それを誰よりも知っている昇仙峡だからこそ、花咲に冷たく当たっていたのでした。

 すべてを知った花咲は、昇仙峡との共闘を誓います。

 もともと『花咲舞が黙ってない』というドラマは、「女性版・半沢直樹」という触れ込みでスタートしました。しかし、今作では菊地凛子演じる昇仙峡玲子こそが真の半沢直樹となり、上層部に倍返しをしていくようです。

 ドラマ終盤、そこに劇団ひとりの半沢直樹もかかわってくるでしょうから、もう展開はいかようにもですね。

 今回の彼岸花のエピソードは、これまでの小説版『花咲舞が黙ってない』ではなく『不祥事』から引用されました。ドラマにおける原作の扱いについていろいろ見直されるべき悲しい出来事が起こったりしている昨今ですが、やっぱり最初から「どうぞ映像化してください」というスタンスで書かれた原作は強いね。そんなことを感じる今回の『花咲』でした。

(文=どらまっ子AKIちゃん)