◆落語の役に立っているのは“パントマイム”

「俳優養成所で学んだことで落語の役に立っていることはありますか?」とよく聞かれるのですが、星先生からいろいろ学んだなかでもとくにパントマイムがよかった。何もないところで「ボールを投げる」とか「壁に触る」とか、体の動きだけで実際にはないものをお客さんの頭の中に映し出してもらう作業は、言葉でそれをする落語と似ています。

 俳優(志望)時代には、飲食店とかコンビニエンスストアとか、いろいろなバイトをやりましたが、警備員のバイトをしたときに実際にはいないトラックを誘導して駐車させる研修がありました。

 笛を吹きながら、トラックをバックで駐車させたあと、運転手に敬礼するところまでを実演したのですが、僕は敬礼するとき無意識に上を向いたんです。すると、教官がなんで上を向いたのかって聞くんです。「トラックの運転席って高いじゃないですか」って指をさしながら答えたら「その通りだよ。すごいね」って褒めてくれました。あれ、やっぱり俺、俳優に向いてるのかなと思っちゃいました(笑)。