◆初舞台で負けを認めてしまった
僕が入った養成所は本当にちっちゃなところで、レッスンは週に三回。稽古場もなく、仲間たちと手分けして公民館の部屋を予約、きょうはこちら、来週はあちらというふうに移動しながら、自分たちでスピーカーやアンプを持ち込んでレッスンをしていました。
養成所には高校を卒業してすぐに入ったものですから社会経験はなく、芝居について大して勉強もしていませんでしたので、うまくできるわけもなく……。
初舞台では頰が震えてしまい、ひどいものでした。それもあって、最初から「自分には向いていないんだな」と勝手に思い込んでしまった。上手な先輩の役者さんをたくさん目の当たりにして「こんな役者には何年たってもなれないよ」と負けを認めてしまったんです。
普通なら、じゃあ頑張るぞ!となるのかもしれないのですが、そこから大して努力をすることもなかった。ただ、楽しいからやっていただけ。幕が開き、板(舞台)の上に立っている間は楽しかったです。