◆「ほんとうに、よく見て、よく聞く俳優」

『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』
――奥平さんのキャスティング理由について、監督が寄せたコメントが面白かったです。「よけいなことはやらない。説明はしない。ただ立っているだけで風が吹いてくるような感じがします」と。

古厩:俳優にはテレビっぽい人とそうではない人がいると思っています。その意味で奥平さんはテレビっぽくはない。テレビではとにかく終始何かしていなければなりませんが、一方映画では大前提として、まずそこにいるということが大切です。

――そこにいるということ、存在しているということに対して、よく“ナチュラルな演技”と表現されますよね。この表現にはいつも違和感を覚えます。ナチュラルとはつまり、何もしていないわけで、何もしていないこととそこに立っている佇まいとして存在していることはまったく違うことですよね。

古厩:彼はほんとうに、よく見て、よく聞く俳優です。普段の生活の中でもそうですが、何かを意識的に喋ろうと思うと、途端に相手を見られなくなったり、聞けなくなったりします。プロの俳優さんでもそういう人が多いなと思いますが、奥平さんはそれができるんです。

――画面の中で演技が持続するんですね。

古厩:そうですね、素晴らしい才能です。