◆リナ・サワヤマのユニークな経歴
まず、彼女の特異な経歴から。リナが生まれたのは新潟県。そう、正真正銘の日本人。4歳のとき、イギリス、ロンドンへ移住する。
大学は名門ケンブリッジ大学。法学部で政治学や社会学、心理学を学ぶ。法科出身ながら、幼少期から大好きだった音楽の世界へ果敢に飛び込み、卒業後に本格的に活動を始めるのだ。
優秀なコンサルタント経験もありながら今やグラミー賞歌手のジョン・レジェンドなど、ユニークな経歴のアーティストは意外にいるものだが、では、リナが表現する音楽世界とは。
◆「Chosen Family」の意味
経歴だけでなく音楽もユニークなリナの表現性を考えるなら、この一曲が最適だろう。リナが2020年にリリースした「Chosen Family」。「Chosen Family」とは、血縁や人種にとらわれない家族のような共同体を意味する。
LGBTQコミュニティで育まれてきた言葉だ。トラックタイトル自体に直接的な意味を持たせながら、リナの歌声がこれまで居場所がなかった相手を優しく包み込むように囁いてくる。力強く鼓舞してもくれる。人類全体がひとつの母胎の中で揺り動く様には聴こえないだろうか。
全(パン)世界を包み込み、愛の眼差しを向けるリナらしい温かみを感じる。この曲を高く評価したのが、LGBTQカルチャーの生き証人エルトン・ジョンだったことも象徴的で、2021年にエルトンとリナはこの曲を再レコーディングしている。改めてその意味を世界に問うたのだ。
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