◆「あなたがこちら側に来なくちゃ」

エステを出禁になり、智也を傷つけたことを悟ったちはるはどんどん落ち込んでいく。スワッピングサークルに出入りさせられているのは、祥子(板谷由夏)夫婦に弱みを握られているからではないか。だったら私が救わなければ……。恋愛したことのないちはるは、自分の都合のいいように物語を紡いでいく。

志保に懇願して祥子を紹介してもらったちはるは、智也の過去を知る。「魔性の男」は、その魔性ゆえに闇を抱えていたのだ。それでも智也に会いたいと泣くちはるに、祥子は言った。

「2日後にパーティがあるから来れば智也に会えるわよ」

そして彼女は言うのだ。

「住む世界の違う智也に会いたいなら、あなたがこちら側に来なくちゃ」

◆「あちら側」と「こちら側」。スワッピング参加者の心理

スワッピングやグループセックスを楽しんでいる人たちは、ごく普通の社会人であり、家庭人である。だから当然、「世間の常識」を知っている。同好の士が集まるのは問題ないが、そういうことに偏見をもっている人が自分たちのありようを知ったらどう思われるか。ある意味ではそれを恐れてもいるのだ。

雑踏
写真はイメージです(以下同じ)
スワッピングパーティに行った経験のあるミカコさん(仮名・49歳)はこう言う。

「うちは比較的、仲良くやってきた夫婦だと思っていました。でも結婚20周年のとき、夫に『ふたりでできる趣味をもちたい』と言ったら、『スワッピングしてみたい』と言われたんです。

私はセックスが好きではなく、年に数回、夫に懇願されてするくらいでした。夫婦の間にセックスなんてなくても信頼と愛はあると思っていた。でも夫は『身体的、健康的にできない理由があるならしかたがないけど、僕はきみに拒絶されていつも寂しかった。僕はごく普通の性欲がある男だから』と言い出して」