◆まひろと為時の父娘の関係に涙

NHK『光る君へ』第20回
一方、まひろのほうにも変化があった。

父・為時(岸谷五朗)が淡路守を命じられたが、その直後に越前守へと国替えになった。越前は宋人が多く集まる場所。漢籍にも秀でている為時には最適な地であった。

なぜそんなにうまく? と首をひねるところだが、実はまひろが父に成り代わって道長に国替えの申し文を送っていたのだ。

そして、この状況に為時もさすがに黙ってはいられなかったのだろう。まひろに真実を訪ねる。従五位下の叙爵も、淡路守の任官も、越前守への国替えもすべて道長の計らい。そしてこれは道長からまひろへの思いとしか考えられない、と。まひろの生き方をとやかく言わないし、ふたりの関係は堅物の自分には計り知れぬもの。そこに踏み込むことはしないが、何も知らずに越前に行くことはできない――。

そんな為時にまひろも応え、道長との関係についてついに打ち明けた。きっと、まひろが道長の妾になっていれば、為時はもっと早くに官職につけていただろう。しかし、時間がかかっても、為時がもっとも力を発揮できるであろう場所にたどり着くことができた。ある意味、まひろの決意が呼び込んだ結果なのかもしれない。

それにしても、毎回、道長にとってまひろの存在の大きさを実感させられる。今回は申し文を見て、為時ではなくまひろのが書いたものだと勘づいた。現代ではあり得ないだろうけれど、平安の世は顔を見るより、字を見るほうが多かったかもしれない。前回も行成の字が人気だ、という話もあった。現代で言うと、SNSの裏アカが文章の癖で分かってしまうようなものだろうか(というと情緒がないが……)。