■「自分探し」をやめた先のこと

 前回、高校時代の同級生の多面性に触れたことで「もういいや、自分のこと探さない」という思いに至ったまことさん(めるる)。完全に吹っ切れたらしく、周囲に躊躇なく「今の自分」をぶつけていくことになります。

 元カレの花屋・公太郎(瀬戸)とのケンカのシーンは実にスリリングでした。

 10年前にバイク事故で肩に大ケガを負い、バスケ選手の夢をあきらめていた公太郎。2ケツの後ろに乗っていたそうで、運転していた幼なじみの男の子とは事故以来、疎遠になっていました。

「つらそうだったから、俺のこと見るのが。バスケしてない俺があいつの近くにいる限り、あいつは自分のこと許さないし、責め続ける」

 だから自分も忘れたいし、幼なじみにも事故のことを忘れさせたい。どっかで楽しくやってれば、それでいい。公太郎の言っていることはよく理解できるし、気持ちもわかります。

 しかし、すべてを忘れてしまったまことさんには、もはや「忘れたい」ことなんてひとつもないし、「忘れるべき」ものもない。だから、それを持っている公太郎さんが自分から何かを忘れようとすることを許すことができない。