ファンタジーなら別にいいんですけど、『イップス』はリアルに即したミステリーです。現実社会において描かれるミステリーというものは、ドラマから与えられた情報と、見る側があらかじめ持っている常識や知識を織り交ぜて物語を追いかけるからこそ楽しめるものです。それが冤罪にまつわる事件であれば、「冤罪」という言葉の周囲にある状況は、できるだけリアルに作り込まないと、ドラマに乗ろうという気になれないのです。「冤罪」というテーマがシリアスでなくなってしまう。テーマがシリアスでない物語の登場人物が、個別にシリアスでいられるわけがありません。

 言いたくないけど、作ってる側があんまりミステリー好きじゃないんだろうなと思っちゃうんですよね。ドラマなんだからいろいろ矛盾や手落ちがあることは仕方ないんだけど、ミステリー好きじゃない人が作るミステリーって、「ここだけは、それやっちゃうとイカンのよねえ」という勘所を平気で落としてくるので、大筋としておもしろくてもちょっとアレなんだよなと、そんな感じです。

 大筋としては、おもしろくなってきたと思いますけども。

(文=どらまっ子AKIちゃん)