脊椎をやられた(たぶん)お姉ちゃんは、それ以来車イス暮らしを強いられるようになり、やたらと「がんばれ」とか言ってくる妹・雲田に対しても心を閉ざしています。

「なんで彩じゃなくて私なの!」なんて荒れまくるお姉ちゃんが言ってるのを聞いちゃったこともある雲田。お姉ちゃんがクレーンの下敷きになったのは、雲田が呼び止めたからだったこともあって、罪悪感からいまだに事故当時の風景がフラッシュバックしてしまうという傷を抱えています。

 もうひとり、今回、防災教室に集まった子どもたちの中に、心に傷を負った女の子がいました。大好きだったおじいちゃんを台風で亡くし、その遺体が運ばれていくのを目の前で見てしまった少女。彼女が大切にしていたぬいぐるみは、首元のリボンと耳が取れかけていた。雲田はそれをきれいに縫い直してあげますが、このことによって女の子もまた、当時のことを思い出して過呼吸を起こしてしまいます。

 平穏な日常の中で、健康で、笑うことだってできる普通の人たちの中にも、こうして心に傷を負って苦しんでいる誰彼がいる。そういうことを際立たせるための、あえてのコミカル演出をやってくる。『ブルーモーメント』は、そういうことがわかっている信頼の作品です。