◆愛も、権力もいらないとは言えない

『光る君へ』10話(C)NHK
かつて道長――三郎は言った。

「俺のまわりの女子はみな寂しがっている。男はみな、偉くなりたがっている」

まひろが寂しがる女子だったら道長は惹かれなかっただろう。でも道長は全てを捨てて遠くへ行こうと言う。

道長が偉くなりたがっている男だったらまひろは惹かれなかっただろう。でも、まひろは道長に偉くなれ、と言う。

愛だけではおなかは膨れないし、権力がなければ理想は理想のままだ。すべてを捨てて、と言っても結局は何も捨てられない。それが幸せで哀しいことなのかもしれない。

<文/ふくだりょうこ>

【ふくだりょうこ】

大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ