◆本性を見せていない夏生
ハルキが廊下を歩いていると、どうも同級生たちから注がれる視線がおかしい。教室に入ると、クラスメイトからは「レイプ魔」と野次られる。いやいや、どういうこと?
ハルキが抱える不安は、想像以上に闇が深かったようだ。レイプ魔と呼ばれる原因になった幼馴染の尾崎ちふゆ(原菜乃華)にしつこく付きまとわれ、彼女を激しく怒鳴りつける場面は、やや唐突であるが、凄みがあった。
グルーヴ感のある演技とでもいえばいいだろうか。ドラマーがスネアを打つ一撃のような力強さが宿っていた。
それに比べ、吉沢悠が演じる父親の何と頼りない、弱々しさだこと。でも病みまくりの深愛とハルキに対して、夏生はまだまだ本性を見せていない。パラサイト不倫の連鎖は、どこまで恐怖を深めるのだろうか。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu