◆数分の間の感情の変化から目が離せない

『光る君へ』(C)NHK
一方、詮子は内裏を訪れていた。退位した円融天皇に挨拶をするためだ。詮子にとって、円融天皇は愛する人。難しいとはわかっていても、また仲睦まじく過ごせる日を夢見ていたに違いない。

しかし、円融天皇の言葉は辛らつなものだった。「毒を盛ったのはお前と兼家か」と問い詰める。「生涯許さない、二度と顔を見せるな」とも。さらに、檜扇を投げつける。檜扇が詮子の顔をかすめ、傷がつく。もちろん、円融天皇は謝りなどしない。

「人のごとく血なぞ流すでない! 鬼めが」愛する人に距離をおかれただけではなく、疎まれ、しまいには鬼とののしられる。こんなにも悲しいことがあるだろうか。期待、悲しみと絶望、怒り――。数分の間に表情に込められた感情の変化が凄まじい。

詮子は、そのまま兼家と三兄弟が宴をしている席に乗り込むが、怒りを爆発させたとて、何かが変わるわけではない。三兄弟も味方はしてくれない。何とも不憫な……詮子のおかげで地位を確固たるものにしたくせに、と思わずにはいられない。

長男・道隆(井浦新)も父を責めるわけでもなく、これからも支えることを誓うのみ。偉くなるのがそんなに良いことなのかと思うが……。