◆「あなたは誰?」
どこか鬱屈としたものを抱えているまひろだが、彼女が唯一夢中となっているの代筆業だ。
好きな女性に贈る歌を代わりに書くというもの。言ってみれば、ラブレターの代筆ということだろうか。男のフリをしてこの仕事に取り組んでいるときは、「まひろ」という自分のことを忘れられているのかもしれない。実にイキイキしていて楽しそうだ。
しかし、手紙の代筆というのは想像力、そして経験がないとなかなか難しいものに思う。
まひろは勉強はできるが、経験という意味ではまだ浅いのだろう。まひろが書いた歌が繰り返し、突き返されるということが起きてしまう。
そんな中で、まひろは「三郎」(柄本佑)と6年ぶりに再会する。今は成人して道長だ。
あの日、ずっと待っていたのにどうして来なかったのかと問う道長。
あの日は、母が殺された日だ。まひろはあの日のことを思い出したくない、と言うと、道長もそれ以上は問いたださない。
同時に問う。
「まひろ。お前は一体誰なんだ」と。まひろは絵師のところで代筆をしている、楽しい仕事だと言うと、道長は「この世には楽しい女子もいるのか」とぽつり。
「俺のまわりの女子はみな寂しがっている。男はみな、偉くなりたがっている」道長の父・兼家は偉くりたがっている男の筆頭だろう。
そして、姉の詮子(吉田羊)は円融天皇(坂東巳之助)に愛されたがっている。まさか道長の家族がそんな人たちだと知らないまひろは「あなたこそ誰なの?」と問い返す。が、ふたりが話をできる時間はそう長くはない。道長は今度、絵師のところに行く、と言う。毎日はいないというまひろに「会えるまで通う」と道長。
別に口説いているわけではないのだけれど、ふとした一言がグッとくる。ただ、詮子と話している中で「忘れられない人がいる」ようなそぶりがあった。好きかどうかは別にして、まひろのことが心のどこかにあったのは事実だろう。