◆社会派作品の道しるべとして
いわゆる“社会派”という言葉がある。その時代ごとに移ろう社会の深層に切り込み、真相を求める態度のことだと理解してみる。
社会派と呼ばれる作品は、制作サイドの取材力や独自の視点が結実した硬派なものとされる。
すると観客たちは、眉間にシワを寄せて、肩に力を入れながら作品を見る。でも、必ずしも難しい顔をする必要があるだろうか。そんな疑問を清々しく解消してくれるのが、中村蒼という俳優の存在だと筆者は思っている。
『東京難民』(2014年)や『NHKスペシャル「詐欺の子」』(NHK総合、2019年)など、中村は時代に翻弄されながら生きる主人公を演じてきた。作品内で難しい顔をするわけでもない。どこまでも精悍なたたずまいの彼こそ、社会派作品の道しるべではないだろうか。
【こちらの記事も読まれています】