◆相手がいちばん苦しむこととは

 ドラマ『夫婦が壊れるとき』最終話。陽子(稲森いずみ)は、息子の凪(宮本琉成)を連れて、彼の命名の由来になった思い出の海に出かける。そして、自宅に戻ってきたのは陽子ひとりだった。

 ただならぬ気配に、夫の昂太(吉沢悠)が凪はどこだと詰め寄る。陽子は、手に包帯を巻き、シャツに血もついていた。尋常ではない様子で「もう終わり。凪には会えない。あなたが全部悪いのよ」と涙をこらえてつぶやき、切り取った髪の毛を昂太に渡す。「凪の匂い」と言いながら。

 妻が凪を、何よりも大事な自分の息子を殺めてしまった。そう思った昂太は崩れ落ちる。このドラマ、夫の浮気に対して妻の激しい復讐が繰り広げられてきたが、最大の復讐はこの瞬間だったのではないだろうか。相手が大事にしているものを奪い取ること。それは相手を一生苦しめることになる。それをわかっていた陽子の、エグいまでの復讐劇だ。

◆昂太は耐えられなくなり……床に血が広がっていく

 そこへ帰ってきたのが凪だ。昂太は駆け寄って、凪がケガをしていないことを確認する。仕事が忙しい妻に代わって、いつもそばにいて育ててきた凪を抱きしめようとする昂太。だがその手を息子は払いのける。

「子どもが産まれるって本当?」

「家のお金も全部使ったって、本当なの?」

 息子に畳みかけられて、昂太はなにも言えなくなる。陽子はそれを見ながら小さくほくそえんでいる。これが彼女の復讐の上塗りだ。死んだと思わせて絶望に落としたと思ったら、息子は生きていた。だがその息子は、母から事実を聞かされて父親を拒絶する。昂太は言い訳などできない立場だ。

 凪が自室へと駆け上がってしまうと、昂太は二重の絶望感に耐えられなくなり、「うわあああ」と叫んで陽子を投げ飛ばす。床に徐々に広がっていく血。

 駆けつけてきた友人が「救急車」と言うと、昂太は「警察もだ。オレがやった」と言う。