どれだけ探しても出てこない、どこに置いたか思い出せない。その客にとってのペアリングは、まこちゃんにとっては人生そのものでした。

「ダメじゃ、ないんじゃないですか。ないものは、ないんだし」

 記憶を失ったことを受け入れ、新しい人生を歩んでいくことを決意したまこちゃんは、ここで初めて「なくされた側」「忘れられた側」に対して自分の思いが及んでいなかったことに気づかされるのです。

「わかってはいるんです。指輪にできた傷も僕たちの歴史で、新しい指輪じゃ意味がないって」

「傷も歴史」。重いセリフです。こうしてドラマはまこちゃんに「記憶を失う」ということがどういうことなのか、ひとつひとつ現実を積み重ねながら突き付けていくことになります。

『くるり』の第3話は、「本当の自分を探す旅」の中にいるまこちゃんの意識が、他者に向いていく様を描いています。