■「傷も歴史」という話

 神社の階段から落ちて記憶喪失になってしまったまこちゃん(生見愛瑠)。周囲の人から話を聞くうちに過去の自分の振る舞いや環境に嫌気がさしてしまい、勢いで会社を辞めてしまったのが前回まで。再就職先をいろいろ当たるものの、最終的には町の指輪職人・杏璃さん(ともさかりえ)に弟子入りすることにしました。

 この指輪屋さんは、記憶を失ったまこちゃんの持ち物の中にあった「誰か(男)にプレゼントする予定だったはずの指輪」を作った店でした。人が仕事を選ぶのにはどうしたって根拠が必要で、私たちはそれを自分の興味や経験に求めることになります。しかしまこちゃんは「自分が何が好きだったか」もわからないし、経験も失ってしまった。そこには指輪だけがあって、その指輪はまこちゃんが「過去に誰かを好きだった気持ち」を持っていたという証明でした。迷ったとき、人は妥協せずに本当に信じられるもの、真実の場所に身を置くべきだという判断を披露しています。

 その店に現れた、いかにも冴えない男性客(別府ともひこ)。聞けば、ペアリングをなくしてしまったのだという。なくしたことを彼女に知られたくないので、同じものを作ってほしい。そんな客の要望を、まこちゃんの師匠である杏璃さんはやんわりと断ります。

「それは、同じではありますが……」

 そう諭され、客も「新しいものじゃダメですよね……」とあきらめることにしたようです。