第1回の動画では前年の『女芸人No.1決定戦THE W』(日本テレビ系)で優勝し、ブレークしていた3時のヒロイン・福田麻貴から1万円を巻き上げることに成功。

 その後、さらば青春の光・森田哲矢、オズワルド・伊藤俊介、紅しょうが・稲田美紀、霜降り明星・せいやなど交流のある芸人に次々に声をかけ、借金を重ねていったヒコロヒーだったが、結局その“借金キャラ”が定着することはなく、「金借りチャンネル」は開設から1年に満たない翌21年9月を最後に更新を停止している。

 更新停止の理由はチャンネル内では明言されていないが、誰の目にも明らかだ。ヒコロヒーは、このチャンネルの開設と前後して、売れたのである。

「(お金)ないです、めちゃめちゃない」と言っていた第1回の動画からわずか5カ月後の21年4月、テレビ朝日で冠番組『キョコロヒー』がスタート。前年にはわずか18本(ニホンモニター調べ/以下同)だったテレビ出演本数を210本に増やし、「ブレイクタレントランキング」で5位にランクイン。芸歴10年、特に賞レースで結果を残したわけではなかっただけに、本人も予期しないブレークだったに違いない。

 YouTubeチャンネルとしての「ヒコロヒーの金借り企画」は、失敗に終わった。世の中、これほど幸福な失敗も珍しいだろう。

(文=新越谷ノリヲ)