話は変わるが、あのブルース・ウィリスが言葉を上手くしゃべれないために俳優を引退すると発表したときはショックだった。

 男の中の男を演じ、中年男のやさしさも垣間見せるウィリスは、何をやってもカッコよかった。

 ショーン・コネリーのように、年をとってから渋い演技を見せてくれると楽しみにしていた。

 映画では「運の悪い男」ばかりを演じたが、私生活では女優デミー・ムーアと結婚・離婚し、若いモデルのエマ・ヘミングと結婚して2人の娘を授かっている。

 だが2月17日、「意思疎通も難しいほどの重度の認知症に罹患した」と、現妻と元妻、それに5人の娘たち7人の連名で公表された。

 元妻デミーとは、別れてからも兄と妹のように付き合い、現在の妻もそれを受け入れていたという。

 この認知症は言語中枢には支障はできても、日常生活は普通に送れるケースが多いという。ブルースは、これからも心穏やかに過ごせるのだろう。

 私も認知症である。物覚えが極端に悪くなってきた。以前から、カミさんの物忘れを指摘し、「気を付けたほうがいいぞ」などと偉そうにいっていた。

 1カ月ほど前から、少しでもカミさんの認知症を遅らすためにと、トランプの神経衰弱を毎晩、食事の後でやることにした。

 ところが、これが、全く勝てないのだ。負けたほうが500円を払うのだが、これまで30回近くやって、私が勝ったのが最初の1回だけ。引き分けが1回。それ以外は、カミさんの連勝また連勝。それも、倍近い差がつくのである。

 私は、カミさんが直前に開けた2枚の札しか覚えられない。明らかに、認知症なのは私の方である。毎日負け続ければ、月に1万5000円、年にするといくらかな? 相当な負けになる。

 カミさんのためにと始めたものが、己の認知症を確認する場になるとは、嗚呼!