指輪がシンデレラフィットする男性の候補として現れた3人のイケメンも、今のまことが考えるべきテーマを与えてきます。

 元同僚の朝日(神尾楓珠)は「仕事選びは好きか好きじゃないかではなく、向いてるか向いてないかで決めた」と言い、花屋の元カレの公太郎(瀬戸康史)は「好きなことを仕事にしたら」と言う。謎のITイケメン律(宮世琉弥)は「自分の人生を幸せにするために、どう働くかで仕事を決めたらいい」と言う。

 このドラマが巧妙なのは、そうしたテーマをキュンに織り交ぜて提示してくることです。例えば元カレが不意にまことを抱きしめるシーンがありますが、ここでまことが「このぬくもり……覚えてる……(キュン)」みたいな描写をしないんですね。テーマ部分と装飾部分をちゃんと切り分けている。このキャスティングでこの雰囲気なら「恋愛に心を支配される」という方向に進んでも別に不思議じゃないところですが、あくまで「意味」で展開を作ろうとしている。「ポップに見せてマジにやる」というのはそういうことです。

 それでいて、まことの仕事選びの結論としては「人を好きだった気持ち」に根拠を求め、キュン要素の象徴である指輪につなげていくあたり、ホントに巧妙にやってるなと感じます。ここでいう巧妙には否定的なニュアンスは全然なくて、ちゃんと考えて知的なことをやってて素敵ですよという意味です。