■意識不明の人が目覚めるタイミングの話

 脚本家の方々からよく聞くのは「途中からキャラクターが勝手に動き出す」という話です。設定があって、登場人物に行動原理があれば、あとは勝手に動いてくれる。その動きやセリフをペンで追っていくような感覚に陥る。脚本家からそういう類のエピソードが伝わってくる作品は、だいたい素晴らしい作品に仕上がっています。

『366日』のようなドラマは、主人公を橋の上から突き落として意志と行動原理をキャラクターから奪うということをしているんです。「いつ目覚めるかわからない、一生目覚めないかもしれない」という設定を与えられた時点で、ハルトくんは自分の意志で目を覚ますことはできません。

 逆に言えば、目を覚ますタイミングはドラマの都合によって、どうにでもなるということです。何しろハルトくんは「勝手に動き出す」ということがないので、ドラマは思うがままに視聴者にストレスを与え続けることができる。