『光る君へ』というタイトルも意味深で、紫式部からの道長への変わらぬ思いを指しているのでしょうね。どんなに汚いことをしても、私にとってあなた(道長)は「光る君」のまま、もしくは、あなたが本当は送りたかった理想の人生を、私が『源氏物語』に書いてあげる的な展開になるのでしょうか。ドラマの道長は、紫式部に「変わってゆく私を あなたはときどき 遠くでしかって」的なことを思っていそうな気もしてきましたが……。

 このドラマで筆者がもっとも注目しているキャラクターは、ロバート秋山こと秋山竜次さん演じる藤原実資(ふじわらのさねすけ)です。史料で見る限り、藤原実資は有職故実に秀でた「常識人」で、道長に表面的には迎合しながらも、やりたい放題の彼に冷たい視線を向けていたことが、その日記『小右記(おうき/しょうゆうき)』から読み取れる人物です。

 例の「この世をば…」という歌は、道長にとってはあくまで宴の席での悪ノリとして詠んだにすぎず、そのため自身の日記『御堂関白記』には書き残していません。しかし、本来ならば後世に伝わることなどなかったはずのこの歌について、「道長め、あんな下品で自信満々の歌を詠みやがって!」と『小右記』に書き留めたイジワルな実資がいたからこそ、1000年以上も後世の我々が道長のそうした一面を知ることができるのですね。ドラマの実資は、平安時代中期の人物にしてはなぜか古代風の装束をまとっているように見え、かなり浅黒い肌の色をしています。史実以上に一癖も二癖もある人物として描かれていきそうで楽しみです。

 以上、つらつらと心のままに書いてしまいましたが、筆者もひとりの大河ドラマファンの視聴者として、『光る君へ』には大いに期待し、楽しみにしています!

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