世間体や葛藤から開放されてほしい
――離婚の話になってようやく夫の態度が変わるのも、あるあるですよね。ところで、すみれ先生はすごく完璧主義ですよね。みんなの“憧れのすみれ先生”のイメージをなんとしても崩さないように必死なところが気になりました。
大久保「そこがテーマでもあります。すみれ先生の世間体との葛藤とか真面目さ。解放されれば楽なのにって客観的にはわかるんだけど、自分のことになるとなかなか気づけない。
私の中にずっとあったことなんですよね。『ダメな母親ではいけない』という気持ちがすごく大きかったんです。結婚して妻になったからには、夫に幸せになってもらわなければいけないとか、子どものために尽くさないといけないとかプレッシャーがすごく大きかった。だから料理がうまくできない時は、すごく彼が不幸なんじゃないか、後悔してるんじゃないか、悲しませているんじゃないかと思ってしまってつらかったんです。でもそれは勝手に私が思っていただけで、夫も子どもも何も気にしちゃいなくて(笑) 私はすごく自己肯定感が低かったんです。
『そこまで頑張らなくてもいいんだよ』『あなたのことを嫌いにならないよ』『むしろそうやってゆるんでいるあなたの方が魅力的です』ってくらいの思いがみんなの中にあれば手を抜けるし、楽になれますよね。サボってもそれでいいってなれば、お互いに認め合えるじゃないですか。自分に厳しいと、なかなかそうなれない、自分がゆるめられたら、すべて平和なんだと思うんですよ。
作品を読んでる読者さんは、『そんなたいそうな話じゃねえだろ』って思ってる気はしますけど、けっこう本気です(笑) まあギャグで笑ってもらえればそれでいいんですけど、単純にゆるんでもらいたいし、ゆるむことが世界平和かな、みたいな感じで」
【大久保ヒロミ】
1995年、『別冊フレンド』よりデビュー。大阪在住、2児の母。著書に『すみれ先生は料理したくない』(ぶんか社)、『人は見た目が100パーセント』(講談社)、『節約ロック』(講談社)などがある。
<取材・文/和久井香菜子> 和久井香菜子 ライター・編集、少女マンガ研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。英語テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。視覚障害者によるテープ起こし事業「合同会社ブラインドライターズ」代表
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