イノシカチョウは見たことがない変化球を投げ込んでくる

 イノシカチョウも大阪では劇場人気が上昇中のトリオだ。

「ラーメン屋」のネタでは、ラーメン屋店主が長年かけて最高の味を完成させたにもかかわらず、「とある軍団」がやってきて我が物顔でそのラーメンを「味変」してしまう。「この人たちを登場させるのか」とキャラクターのチョイスで笑わせる。また「殺し屋」のネタでは、暴力団事務所へ配達にやって来たラーメン屋の行動と、それに惑わされる組員たちの反応が最高。BGMの使い方も見事である。

 あと筆者は、イノシカチョウのYouTubeチャンネル『イノシカチョウ公式ch』も毎回、楽しみにチェックしている。番組制作にヨーロッパ企画のメンバーである鍋島雅郎が携わっていることもあってか、いつも一筋縄ではいかない仕掛けが施されている。どの企画も、当初のテーマからどんどん逸れていって思わぬ着地を見せる。フェイクをはさみこむことで企画内容が奇妙な角度を描いていくのだ。前情報なく「芸人に会わなきゃ帰れません」(2023年2月11日配信)を観たらきっと騙されるだろうし、イノシカチョウのことをいろいろ分かった上で「ディレクターさんと4人でご飯に行こう」(2023年2月18日更新)、「女性芸人と対談しよう」(2023年3月22日更新)を鑑賞すると3人のイヤらしさに笑わされるはず。

 イノシカチョウは、コントのネタ、YouTubeの企画で見たことがないような変化球ばかり投げ込んでくる。ストライクゾーンに来たと見せかけて、ホームベース手前で急にボールが大きく外へ逸れて暴投になる感覚だ。

 東京に比べて大阪にはまだ知られていないトリオ芸人が多い。しかし、これからどんどん発掘されていくだろう。