しかし、ここがポイントなのですが、一度中宮の座を得た女性がいると、その方が皇太后になるか、亡くなるかしないかぎり、そのポストは空かないので、別の女性が中宮になることはできないのです。

 すでにこの頃、一条天皇から数えて二代前の円融天皇の中宮だった藤原遵子(中村静香さん、町田啓太さん演じる藤原公任の妹)が健在でした。皇太后は(道隆の妹、道兼・道長の姉にあたる吉田羊さん演じる)藤原詮子、そしてドラマには未登場のようですが、一条天皇の三代前の冷泉天皇の中宮で、現在は太皇太后になっている昌子内親王がいて、三后すべてが揃った「フルハウス」の状態なので、一条天皇と定子がいくら仲睦まじくても、定子を中宮にできる余地などなかったのです。

 しかし、道隆は定子を中宮の位に就かせたい一心で、本来は中宮=皇后だったのを、中宮と皇后は別にするという無理やりな解釈を行いました。そして、すでに宮中を退き、兄・藤原公任の屋敷で静かに暮らしている藤原遵子を、円融天皇の中宮ではなく、皇后ということにしたのです。

 しかし、この「中宮と皇后は同一の女性ではない場合もある」という先例を道隆が作ってしまったがために、道隆が亡くなり、伊周が花山院(本郷奏多さん)との間に不祥事を起こし(ドラマで触れられるでしょうから今は話しません)、後ろ盾を失った定子は、道長(柄本佑さん)の野望によって中宮の位をとりあげられ、皇后にされることになりました。