柚希の母親・喜江(斉藤由貴)は、一族に伝わる「左手供養」という奇妙な儀式にずっと苦しんできたことが物語中盤で明かされます。今どき、法律を犯すような奇妙な風習が残っているのかと不思議に思うかもしれませんが、絶対にないとも言い切れません。

 日本のような同調圧力の強い社会は、非科学的な根拠による災い=“呪い”がすぐに発動することを、若い世代はよく知っているんだと思います。東日本大震災の後には、福島というだけで風評被害に遭い、コロナ禍では自粛警察によるバッシングが横行したことは記憶に新しいところでしょう。“呪い”が発動した後には、スケープゴートが必要とされる社会だということも、若い世代はリアルに感じているんじゃないですか。

 その点、被差別部落問題を描いた『破戒』(22年)に主演した間宮祥太朗と、『歴史探偵』(NHK総合)に出演中の佐藤二朗という主演コンビは、シリアスすぎず、おちゃらけすぎずにいいバランスの顔合わせだったと思います。唯一、この映画で評価できるポイントでしょう。