◆今日は夢を見そう、それもとびっきりに美しい悪夢を

映画『オオカミの家』
『オオカミの家』© Diluvio & Globo Rojo Films, 2018
 とてつもなく不穏で鮮烈。ワンシーン・ワンカットでずっと同じ家の中を映しているのにも関わらず、絶えず蠢(うごめ)き変化し続ける禍々しいビジュアルに74分間もう目が離せない。なんだか今日は夢を見そう、それもとびっきりに美しい悪夢を。

 チリ南部のあるドイツ人集落で暮らす美しい娘・マリアはブタを逃がしてしまった罰のあまりの厳しさに耐え兼ね、集落から逃げ出した。迷い込んだ森の中の一軒家で二匹の子ブタと出会った彼女は一緒に暮らし始めるものの、森の奥から彼女を探すオオカミの声が聞こえ始める。

映画『オオカミの家』
『オオカミの家』© Diluvio & Globo Rojo Films, 2018
 1960年代、軍政権下のチリに実在したコミューン(生活共同体)「コロニア・ディグニダ」の教育映像という体をとっており、オオカミと呼ばれる男の声の主であろうパウル・シェーファーが何をしでかした人なのか、コロニアでは何が行われていたのか、概要だけでも調べておくとさらに恐怖が増す。