大阪と言えば、僕が芸人をしていたころ、忘れられない出来事があった。昔NHKで放送されていた「爆笑オンエアバトル」の地方大会で大阪に行った時のこと。出演が決まっていた僕たちは大阪ということもあり、事前にコントをやろうと決めていたのだが、番組側から出来れば「西と東の漫才対決を見たいから漫才をやってくれないか」とお願いされ、本番で漫才をやることになった。

 当時はまだ大阪と東京の芸人がそこまで交流しておらず、お客さんの意識としても「東京の笑い」に対して明らかな偏見があった時代だった。一抹の不安を抱きながら出番になり、袖から飛び出し「はいどーもホームチームです」と挨拶した瞬間、最前列のど真ん中を陣取る20人近いお客さんが一斉に下を向いたのだ。

 僕はそんな目にあったことがなかったので一瞬なにが起こったのか理解できなかったが、すぐに「東京もんの漫才」が拒絶されたことに気が付いた。僕自身が若いこともあり、落ち込むのではく、怒りという感情になってしまい、ウケるわけもなく散々な結果になってしまった。

 その後別の番組で大阪へ行った際にコントを披露しきちんとウケたので、大阪への嫌悪感はかなり薄らいだが、あの光景はいまだに鮮明に覚えている。その当時に比べれば、今の大阪は当時のような偏執的考えをもつ人の絶対数は減っており、東京の芸人にとってもやりやすい場所になっているはず。

 そもそもお笑いは間違いなくチームプレイが原則であり、そのチームプレイは何も芸人に限ったことではない。スタッフやお客さんも含めてのチームプレイなのだ。100年以上前からお笑いにこだわっている大阪が、閉鎖的ではなく今よりもっとオープンマインドになればお笑いが新たなステージに進めるかもしれない。お笑いの進化は大阪の進化にかかっている。……たぶん。妙なこだわりは捨て、日本自体をチームとし、もっとお笑いを楽しもう。