第5話は、中央アジアの「バルカ共和国」で乃木を“救出”した警視庁公安部の捜査員・野崎守(阿部寛)が乃木の正体に迫るパートと、誤送金事件に関わり、テントの「日本担当」幹部だというGFL社の社長アリ(山中崇)を追う乃木のパートの2つの視点から巧みに描かれた。

 ここでは第1話の乃木の行動の裏側がまず明かされていく。乃木が資料を落としてアリのデスクの下をゴソゴソする場面があったが、あの時やはり乃木はアリに仕掛けていたのだ。アリの私用携帯電話のデータを盗み、GPS発信機が仕掛けられた携帯電話にすり替えていた。野崎がドラム(富栄ドラム)を使って乃木に盗聴器を仕掛けさせていたことも、やはり乃木は気づいていた。さらに、野崎が乃木を“救出”することになるザイール(Erkhembayar Ganbold)が自爆する場面では、野崎とほぼ同じタイミングで乃木が足首に隠した拳銃でザイールを撃っていたことも判明。野崎は、乃木が別班であるとの確信を深めていく。

 野崎は日本に戻って乃木の過去を調べなおし、公の経歴にあったアメリカの公立ロンガリー高校には在籍していなかったが、同じロンガリーの名前のついた私立のミリタリースクールに通っており、全科目主席で卒業するほど優秀だったことを突き止める。そこをきっかけに乃木の生い立ちが紐解かれていく。乃木は3歳のときにバルカの内乱に巻き込まれて両親と死別し、人身売買によってこじきをさせられていたところを戦場ジャーナリストに救出されて日本に戻ったという経緯があった。警察に保護されるも、バルカではひどい暴力を受けていたとみられ、強いストレスによる記憶障害で自分の名前も覚えていなかったことから、京都府舞鶴市の児童養護施設に預けられ、丹後隼人と名づけられて育てられた。そして高校生のときに島根のたたら製鉄の特集番組をテレビで偶然見かけ、記憶に引っかかるものがあり、たたら製鉄の御三家だったという島根県奥出雲町の乃木の実家にたどり着く。そこでDNA鑑定の結果、乃木家の親族であることが証明され、バルカで死んだと思われていた乃木憂助本人であることが分かったのだった。

 さらに第5話では、乃木がテントに対して執念を燃やす理由も明かされた。野崎は、乃木が3年ほど前に突然実家を訪れ、両親の遺体が見つかったかどうかや乃木家の家紋について尋ねていたという話を聞く。その家紋を確認した野崎は驚愕する。テントが使っている謎のシンボルマークとまったく同じだったのだ。一方、バルカにいる乃木はアリの居場所を突き止め、軟禁。テントのアジトの場所につながる情報を得ただけでなく、乃木はテントのリーダーが誰かを訊ねる。そのリーダー、ノゴーン・ベキ(役所広司)なる人物は、やはり亡くなったはずの乃木の父親・乃木卓だった。卓(林遣都)の40年後の姿をシミュレートした画像を見せられ、アリは「我が父、偉大なる指導者」と認めた。テントの創始者・リーダーが日本人であるとの情報、そしてテントが乃木家の家紋を使っていることから、乃木はずっと疑っていたのだろう。